PROJECT
「ゴミ」収集車が
「情報」収集車に!
広域・稠密な都市センシング・テストベッド
「ゴミ」収集車が
「情報」収集車に!
広域・稠密な都市センシング・テストベッド
ゴミ収集車は、毎週同じ場所を通り、街の中を巡回します。すべての自治体が提供するサービスであるこのゴミ収集車にセンサをつけることで、簡単な設備で低コスト、時空間カバー率の高い都市センシングが可能になります。TMIでは、日進市の25台のゴミ収集車にセンサをつけ、基本データ(日付、時刻、緯度、経度、高度、スピード、GPSなど)と、環境データ(温度、湿度、気圧、照度、UV、騒音、不快指数、暑さ指数など)を測定する仕組みを開発・運用しています。
例えば位置情報は、ゴミ収集車の場所を住民にアプリで通知するサービスに展開できます。他にも、ゴミの出し方や量、街のインフラの状態のデータは、持続可能な街にしていくための検討に活かせます。
また、収集したデータを、見て触れられる形に実体化することにも取り組んでいます。*1 実体化することで、よりインタラクティブな形での情報提示が可能になり、サービスや政策検討に活かせるのです。海外では、データを実体化したものをもとに市民が政策を議論するワークショップなども行われています。*2
TMIではさまざまな自治体・企業と協力して「テストベッド」を構築しており、日進市の場合、街全体がテストベッドのフィールドです。都市・地域にはいろいろな課題が潜んでいて、TMIのテストベッドではそれらをいったんデータ化することで炙り出します。そして再び見える形で実体化する。データ化→実体化→課題発見。このプロセスに多様な専門家や関係者が関わり、解決策を導きます。テストベッドには、工学、情報学、経済学、環境学、法学などあらゆる問題が含まれ、非常に学際的な取り組みが求められます。現状の課題だけでなく、10年後、20年後に発生しうる新しい課題を発見することも重要です。学生にどんどん飛び込んでもらって、自身の専門分野と照らし合わせて新しい課題を見つけてもらいたい。テストベッドがあるからこそ得られる課題に、行政や民間企業の方々と一緒に、今後も取り組んでいけたらと思っています。
(2022年1月インタビュー)
名古屋大学大学院工学研究科・准教授
愛媛県出身。2010年慶應義塾大学博士号取得(政策・メディア)。
2012年カーネギーメロン大学客員研究員、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師、特任准教授などを経て現職。システム・ネットワーク・ヒューマンコンピュータインタラクションの交点に興味。
*1 Tangible User Interface
タンジブル(tangible)は、触れて感知できる実体があるという意味。MIT石井裕教授が1997年に発表した「Tangible Bits」を発端に、形のない情報に直接触れられる、より実体感のあるインターフェースの研究が世に広まった。
*2 EBPM
Evidence-Based Policy Making。エビデンスに基づいて、政策を立案すること。