TMI - 名古屋大学 卓越大学院プログラム ライフスタイル革命のための超学際移動イノベーション人材養成学位プログラム

活動報告

法×情報×モビリティ


RESEARCH

移動イノベーションのためのLinked Open Dataに基づく法情報活用基盤の構築

[安田理恵先生に聞く]TMIの特徴的な研究活動

移動イノベーションと法

TMIが扱う「移動イノベーション」の分野は、将来の法令の改正や新法律の制定を考えていく必要性のある分野です。その場合、現在の法令だけでなく、過去の関連する法令の改正の経緯などにもさかのぼって参照する必要があります。法の世界では、未来の法令を考える場合に、過去の法令を参照できることは重要ですが、データ化されていないためにこの作業が大変です。

また、「移動イノベーション」を取り巻く規制の法源には多くの種類があります。加えて、例えば同じ「普通自動車」というコトバを用いていても、法律ごとにその内容が違うといったこともあります(ある法律ではバスを含み、また別の法律ではバスを含まない等)。そのため、関連する法令・行政規則を網羅的に把握することは容易ではありません。新しい移動技術を開発しようとする人が、既存の規制の中からどれを参照し、それらをどう解釈するかを検討するためにも、関連法令間の関係をデジタルデータ化し、検索・活用を容易にすることには意義があります。

異分野協働でアプローチ

そこで私たちは、法令の時系列変化や関連法令間の関係をデジタルデータ化し、モビリティ関連法令の検索・活用を容易にすることを目指した研究に取り組んでいます。
関連性のあるデータを結び付け、情報の把握を容易にするためのアプローチとして、法令データにLinked Open Data (LOD)の手法を導入しようとしています。LODは、情報(データ)同士の関連性を抽出して構造化することで、検索や利用を容易にする手法です。この手法では、主語-述語-目的語の3つの要素に、法令の中身を割り振っていく必要があるのですが、この関連付けの抽出に法律の専門家の知見が活きてきます。

この研究は、異なる専門分野の3人の研究者が共同で行っています。文系と理系の言葉遣いの違いや認識の違いもありますが、それらを乗り越えることを通して、文理融合を肌で感じられることが、TMIの活動の醍醐味でもあると思います。

LODの手法で移動に関する法令を構造化しようというアプローチは今までにない取り組みです。今後はまず、各法令のさまざまな言葉についてそれぞれのResource Description Framework(RDF)のネットワークを作ることが目標です。途方もなく地道な作業ですが、異分野協働で前進を続けていきます。

(2022年1月インタビュー)

安田理恵

未来社会創造機構モビリティ社会研究所モビリティサービス研究部門特任講師、専門は行政法。名古屋大学大学院法学研究科修了、博士(法学)。


研究プロジェクトのメンバー

外山勝彦

名古屋大学情報基盤センター学術情報開発研究部門教授、専門は知能情報学。

駒水孝裕

名古屋大学数理・データ科学教育研究センター准教授、専門はLOD。

安田理恵:上記。


Linked Open Data

LODでは、Resource Description Framework(RDF)と呼ばれる主語-述語-目的語の構造を作成する。例えば、「道路運送車両法(主語)は-道路運送車両(目的語)を-規制の対象としている(述語)」のように、構成要素のつながりを一つ一つ抽出していく(上記はイメージ図)。

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